かねて知を恐れたまえ

映画や本、ゲームについて。絵も描いています。

コジロー、ロシアへ行く。

モスクワへ行ってきた。

ブログに書こうと思いつつ三ヶ月も経ってしまった。

そう、2月の真冬に決行したのである。

毎回魅惑的な内容でプレゼンしてくる、ロシア情報サイト・おそロシ庵さんの企画についに参加を決めて。

 

充実しまくったスケジュールで見たもの・食べたもの・体験したこと盛り沢山の旅だったのだが…ロシアへの想いが強過ぎて、初上陸の感慨も深過ぎて、さらには旅日記のような記事を書くガラでもないので、さてどうするかと考え込んだ挙句こんなに時間が経ってしまった。

 

というわけで、見る事が出来て嬉しかったもの、現地で手に入れたギフト(とあえて言う)などを思いつくまま並べてみる事にした。

 

①魅惑の建造物

 

 

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「おお、カッコいい建物!!」と思って正面に回ったら、タス通信社

いつもお世話になってます。

 

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ロシアの二大新聞社のひとつ《イズベスチヤ》本社。

あ!イズベスチヤ買ってくるの忘れた!

 

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MGMのライオン、コロンビアの女神、そしてモスフィルムのアレ!!

…写真小さい、小さいよ!(たぶん近くに行けば超デカいと)

 

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泊ってないけど超高級ホテルのホテルモスクワ。

あまりの大きさに遠近感が無くなるほど。

ダークソウルシリーズの巨大建造物のよう。

中に入ると、そこら中に「こちらからは開かない」扉があり、ショートカットのエレベーターがあり、最奥には泣きたくなるほど強いボスがいるのだ。

 

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後述する、お土産市場。テーマパーク感満載。

実は滞在中非常に暖かい日が続いて(零下3度くらい) 、この最終日は油断してマフラーもカイロも極暖衣類も着ていなかったのだけど、いきなり気温が下がり、寒くて市場内の写真が全然撮れていない。

 

②喫煙事情

非喫煙者の方には不快な内容が含まれているかもしれません。嫌煙者の方は飛ばしてくださって構いません。というか飛ばしてください)

 

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なぜゴミ箱の写真をパシャパシャ撮りまくっているのか…これは、ゴミ箱にしてゴミ箱にあらず、灰皿だからだ!!

出国前、〈ロシアは公共の建物内では禁煙〉との情報を得、6日間禁煙するくらいの覚悟を決めていた。タイのように、レストランやホテルの外には灰皿があるといいな…と希望を抱きつつ。

ところが!

ロシア、喫煙規制に関してはユルユルである!

情報通りホテルや店内は禁煙でたいてい外に灰皿が設置されているが、地元モスクワ市民の動向を観察していると、町中にあるただのゴミ箱にポンポンと吸い殻を投げ入れていく…どころか、ゴミ箱の周りが喫煙所と化していたりする。

ううう、こ、これって…(←泣きそう)

夜のモスクワ散策。スターバックスのタンブラーを買いに他の参加者の方々が店内に入っている間、私は外で一服していた(本当の灰皿で)。買い物を終えた皆さんが出てきたので煙草をもみ消そうとすると、おそロシ庵・千葉さんが  「たぶん(歩き煙草)大丈夫」。

その晩、私は十数年ぶりに歩き煙草をした。

モスクワの冷たい空気をたっぷり吸いながら。

それは紛れもなく《自由の味》だった!!

こんなおいしい煙草、いつぶりだろうか!

愛煙家のみんな、ロシアをめざせ!!

なぜって、こんな風景の中で誰に咎められる事も無く吸えるんだぜ!!

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③ウラジミール・ヴィソツキーのDVD

 

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ギター一本、独特のしわがれ声で体制批判を歌い続けた旧ソ連のミュージシャン、詩人。

魂の叫びとはこの人の声。

これをロックと言わずしてなんと言う!!

ここ日本ではほぼ手に入らない彼の作品…ディスクユニオンに行って自慢したいくらいだ!(大きく出た)

いろいろと動画も配信されているので機会があればぜひ観て欲しい。公式もあるようだが個人の編集が多いので埋め込みはやめておくが、代表曲の《オオカミ狩り》の日本語訳付きなどもある。

 

私の曖昧な記憶で申し訳ないが、その昔《ダウンタウンDX》でクイズをやっていて、日本ではほぼ無名の英語圏以外のアーティストの映像を流し、「なんと歌っているでしょう?」という無茶苦茶な問題が出る、最高に面白いコーナーがあった。

そこでこのヴィソツキーの映像が問題として流れた事があるのだが、放映後、局に「あのアーティストは誰ですか」という問い合わせが殺到したという。

ネットの無い時代の熱いエピソードのひとつとして記憶している。

 

旧ソ連グッズ

 

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お土産市場に溢れた夢のような旧ソ連グッズ。お土産屋さんばかりだし、完全に観光客向けだろうが、私は観光客だ!

「HET!」(ソ連国民はお酒は飲みません!)コースターで酒を飲む幸せよ。

そしてプロパガンダポスター24枚セット。“ゴールデン・コレクション”ですよ。

 

今回嬉しかったのは本屋さんに行けた事。

購買欲求を抑えるのが大変だったが、小説や絵本などを購入。

そしてこれ、買わずにはいられなかった、レーニンの漫画!!

〈世界の偉人シリーズ〉のひとつらしいが、絵も上手く巻末には簡単な資料も付いてオールカラー、479ルーブル。820円くらい?

 

レーニンといえば…

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この旅で唯一観たレーニン像(後ろのヒュンダイが無ければ最高なのに)。

その昔、スターリン主導で全国にエンヤコラサと造られたレーニン像の多くが取り払われたり別の像に置き換えられた。

宿泊したホテルの正面にも超デカい銅像があって(ちなみにポケモンGOのジムだった)、「あれは誰ですか」と尋ねたところ、千葉さん曰く「以前はレーニン像だったけど、今建ってるのはフランスかどこかの建築家。このホテルには縁もゆかりも無い人」とのこと。

 

これは極東の小さな島国の一共産趣味の人間の独り言に過ぎないのだが  

…全部レーニン像に戻しちゃえばいいのに。

 

⑤旅の目的・その1

 

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さくらんぼのジャム。

なぜさくらんぼなのかと問われれば…アレクセイ・カラマーゾフの好物だからに決まっているではないか!

ドストエフスキー愛読者(と書いてミーハーと読んでもいい)としては、なんとしてでもロシアでこれを買わねばならなかった。

私の小さい頃はさくらんぼのジャムなどお目にかかった事が無く(山形県とか行けばあったのかもしれないが)、大人になって初めてフランス産の物を食べた時、そのおいしさにビックリした。日本でよくある苺やラズベリーよりもすっきりした甘さ。

モスクワで購入したこのジャムは、ロシアではメジャーなメーカーとのこと。

さらりとした緩いタイプで、さくらんぼがゴロゴロ入っている。

凄くおいしい!おいしいよ!!

 

あれは18,9歳の頃。

冬は隙間風が通り抜け、夏は天然サウナと化し、春秋に窓とドアを開けて風通ししているとノラ猫の通り道になるというオンボロアパートに住んでいた頃。

金色にブリーチしまくった髪を山口雅也氏のキッド・ピストルズの如く天に向かっておっ立てて、『カラマーゾフの兄弟』を読みながら「いつかロシアのさくらんぼのジャムを食べてみたいなぁ」と思っていた。

あの頃夢想した事のほとんどは成し遂げられていないが、

さくらんぼのジャムは食べたぜ!!

いつか、本当に食べられる日が来るからな!

これからも、お前の身には想像を絶する困難が数々待ち受けているが、お前はそれを乗り越え、ロシアに行く日が来るからな!!

 

⑥旅の目的・その2

 

私は日本のパンクバンド、ザ・スターリンのファンである。

バンド名の由来は「世界で最も嫌われている名だから」。

そして、日本最高のパンクバンド。

 

クレムリンをバックにザ・スターリンのアルバムの写真を撮る事。

今回クレムリンの中には入らなかったが、外壁で撮る事が出来た。

前回のブログに挙げた写真とは別のバージョン。

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撮影:おそロシ庵・千葉さん

 

ここまで来るのに何十年かかっただろう。

ロシアはずーっと私にとって憧れの地であった。

近くて遠い国だった。

東京っ子の私は、モスクワについた時から滞在中、ずっと感じていた事がある。

こんな意見は聞いた事は無いが、

モスクワは東京に似ている。

スケールも違うし広告が溢れている訳でもない。

でも、確かに似ている。

東京の印象とは  「賑やか」「うるさい」「華やか」「人が冷たい」「最先端」…いろいろ聞くが、たぶん東京っ子はそんな印象持っていない。

東京は「暗い」。

この話を東京出身者にすると、皆頷く。

東京は「暗い」のだ。それ以下でもそれ以上でもない。卑下している訳でもない。

何度も「全て無くなってしまった」歴史かもしれないし、多くの人が集まり、弄り回され、多種多様な物が混在し詰め込まれるカオスかもしれない。

 

モスクワは「暗い」。

その理由はまだはっきりとはわからないが感覚的にそこが似ていると思ったのだろう。

つまり私にとって居心地がいいのだ。

多くの国に行った訳でもないが、日本ですら「東京以外には住めない」と思っている私が、初めて「住んでもいいな」と思った都市だ。

あの、でっかくて飾り気のない灰色の集合住宅に住んで、ロシアの変なSF小説みたいな漫画を描きたい。

 

荒波を超え、いろいろなものを失った病み上がりで、他のツアー参加者の方々に迷惑をかけないだろうか…という不安もあった。だが、皆さんいい人ばかりだった。

(おそらく)私の人生の節目にロシアへ行く機会を与えてくれた、おそロシ庵の千葉さん、カーチャさん、本当にどうもありがとう。

そして、不意に思い立って昼間に電話で問い合わせた時、丁寧に対応してくれた大陸トラベルの大森さん、どうもありがとう。

 

私はまたいつかロシアに行くだろう。

煙草吸いにね。

 

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Rock it!マトリョーシカ(コジロー作)

 

=追記=

《ホテルモスクワ》は、 正しくは《ホテル・ウクライナ》。

現在はカールソン・レジドール・ホテルズに加盟し、正式名称は《ラディソン・ロイヤル・ホテル・モスクワ》。

正面からの写真を見たら、両方の名が掲げられていた。

なんだか複雑だが、やはりきっとあの中はダンジョン…

遠藤ミチロウ、すべてあなたの所為だ。

遠藤ミチロウ

あなたのせいで私はパンクになったんだ。

あなたのせいで旧共産圏に興味を持ち、ついにはモスクワまで行ってしまったんだ。

あなたのせいで、今でも編み上げブーツを履いてるんだ。

 

あなたとジョニー・ロットンが私の世界をブッ壊してしまったんだ。

 

私を覆っていた壊れた壁の向こうは、どこまでも果てしなく広がる世界だった。

薄汚くて、残酷で、汚物と欺瞞に溢れ、空虚な、、、、

美しい世界。

 

あなたに会った時、「漫画家を目指してます…」って言った私に、とてつもなく優しい笑顔で頷いた。

 

パンクは群れない。

パンクは正義を語らない。

 

パンクとは、無償の愛だ。

 

 

ありがとう。

 

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一年に一度は読み返す、静かな傑作《蜂工場》

蜂工場 (集英社文庫)

蜂工場 (集英社文庫)

 

一生に数度あるか無いかの体験をした本である。

 

10代の終わり頃、スティーヴン・キングを読み始めてめでたくホラー小説に開眼した私は、タイミングよく発売された《モダンホラー読本》というガイド本に大変お世話になった。

当時、月刊オーパスという本の雑誌があり、(たぶん)ほとんど売れていなかったと思うがなかなか面白かった。そのオーパス編集部による、キング以降のモダンホラー小説オールガイド。

小説紹介以外にも、早川書房東京創元社のホラー担当者の対談から、菊地秀行氏・竹河聖氏によるエッセイ、代表的なモダンホラー映画監督の紹介ページなど盛り沢山のとても贅沢な本!

レリジョン/モンスター/サイコホラーなど独自にジャンル分けし、簡単にストーリーが載っている。そこから、興味を持った本を片っ端から買い、読み漁った。

 

その中に、この本があった。

異様な雰囲気の漂うタイトルに、正直「だから何なんだ…」と言いたくなるようなストーリー紹介。でも、何かが引っ掛かった。

 

神保町の某書店で調べてもらうと、「廃版ですね」という答え。

どうしても読みたいというわけでもなかったが、《イアン・バンクス》《蜂工場》という言葉は常に頭の片隅にあって、古本屋に立ち寄った時などに、ふと思い出して棚を覗いてみたりしていた。だが一度も、熱心に探し回った事は無い。

 

そして時は流れ  

 

ある日amazonで小説を購入しようと思った時、それはやってきた。

脳内に遠くから囁きが…

《蜂工場》

そういえば、インターネットが普及してから(!)探した事が無かった。

一応打ち込んで見てみると  なんと、お手頃価格の中古本が一冊出品されているではないか。…一冊!

光の速さで購入し、数日後、遂に私は十数年越しで対面することになった。

 

何かを長年思い続けた時…見たいなぁ、会いたいなぁ、体験したいなぁ、読みたいなぁ…などと願い続け、意識せずともその期待がどんどん膨れ上がってしまうというのはよくある事だ。で、実際にその時がやってきた時、その膨張しまくった期待を上回る事は…実はほとんど無かったりする。

《蜂工場》に至っては、なんと十数年かけて膨らませ続けてしまった。たった三文字のタイトル、120字あまりのストーリー紹介、2×3センチほどの表紙写真から。

 

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膨れ上がった期待

 

ここはいったん落ち着くべき。

現物を手にしながら、「結末は誰にも話さないでください」という文字を冷静に見つめる(本当にタイトルの下にそう書いてある!)。

 

その休みの日、私は一気に読み終えた。

 

……それは、いつの間にか破裂しそうなほどに膨れ上がっていた期待を、はるかはるか上回る内容であった!!

 

この瞬間。この瞬間のために、このタイトルは君の頭の中でひっそりと生き続けていたのだよ。たとえほとんどの書店から姿を消そうが、この爆発の火種は、常に世界のどこかでじっと君を待っていたのだ。

 

 

主人公のフランク(16歳)は、スコットランドの小さな島で父親と暮らしている。

 彼はなぜ学校に通っていないのか、父親は何をしているのかもよくわからない。フランクは日々、儀式の様に小動物を殺して遊んでいる。

“蜂工場”というのは、彼が作ったお告げ機械のようなもの。大きな時計の文字盤に細工を施し、中に蜂を閉じ込める。12の数字はそれぞれ回廊のような仕切りで分けられ、その先にはそれぞれ仕掛けがある。炎の湖、毒液、溺れ死に…それはお告げであり、どうやらフランクはそのお告げを人間にも実行している。

奇妙なフランクの生活は淡々と描かれ、その静けさがどんどん狂気じみてくる。

さらに、彼にはエリックという兄がいる。

医学生だったエリックは、“何か”が原因で精神病院に入っていたのだが、突如脱走。家へと帰って来る途中途中でフランクに電話をかけてくる。意味不明な会話、異常に兄を恐れるフランク…

そして物語半ばを過ぎた頃、遂に、“エリックが狂った原因”が明かされるのだが……

 

読み終わったあと、ネットでいくつかレビューを発見したが、ほぼ全員同じ感想を持っていた。そして私も。

 

“エリックが狂った原因”が怖すぎる。

 

恐怖小説、ホラー小説、サイコパスなミステリーまで、ある程度の耐性はついていると自負してきたつもりだが、これは想定外の衝撃だった。

どれくらい凄かったかと言うと、問題のページで「こ、これはもしや…」と思った瞬間、いったん本を閉じてしまった!!

深呼吸しなければ先が読めなかった。

 はっきり言って、ラストのどんでん返しもさることながら(結末は誰にも話さないでください)、この小説最大のクライマックスはこの部分である。

同じ頃に発売された震撼のスプラッター小説・クライブ・バーカー《血の本》全6巻を、《蜂工場》はたった4ページほどで凌駕している。

 

アレだ。

『ほとんどの人にお勧め出来ないけど実は全人類に読んでもらいたい傑作』。

199ページ目にして認定。

 

よく小説などで“狂ってしまった人”が出てくるが、その経緯を読んで、「そんな理由で…イっちゃうの?」と思う事がたまに…いや、よくある。

その時代特有の重圧だとか、肝心要のキャラクター心理を理解していないとかかもしれないけど。

心理学者の河合隼雄先生曰く、「人間の精神とは、皆さんが思っているよりもずっとずっと脆いのです」   だそうだ。

今は少しわかるようになったが。

 

だがしかし。

エリックのことはわかるよ!

これは…狂うよ!!仕方ないよ!!!

 

オマケの様に書いておくが、ラストはちょっと感動的だ。ここは意見の分かれるところだと思うが、個人的に美しい終わり方だと思う。オチへ向かって怒涛の展開を見せるが、一貫して不気味な静けさを感じさせる文章力は、これがデビュー作とは思えぬ手腕だ。

 

その後一年に一度は読み返しているわけだが、二回目以降、あまりにあまりな物語なので私は頭の中で兄エリックを若かりし頃のジョナサン・リース=マイヤーズに演じてもらっている。

「悲惨な目に合う主人公は、見た目のよい俳優が演じないと観客が観ていられない」とド正論を吐いたのは、《レクイエム・フォー・ドリーム》を撮った時のダーレン・アロノフスキーだったか。

(エリックは主人公の兄だけど)。

 

作者のイアン・バンクスは他にも何冊か日本でも翻訳されているが、本国イギリスではずっと人気のある有名な作家だったらしい。だった、というのは2013年に亡くなってしまったからだ。合掌。

 

ところで、前述の河合先生の言葉には続きがある。

「人間の精神とは、皆さんが思っているよりもずっとずっと脆いのです。同時に、皆さんが思っているよりも、はるかに強いのです」

いつでもこの言葉を思い起こさせてくれる物語、それが《蜂工場》。

 

手に入れるのは難しいかもしれない。

でも、未読の方がいたら、なんとなく頭の片隅に入れておいてくれたら嬉しい。

イアン・バンクス》《蜂工場》

 

今日もきっと、世界のどこかで静かな爆発が起きている。

 

 

=追記=

なんと、先月(2019年3月)にハードカバーとして復刊されていた事が判明。

しかも改訂・完全版。

名作を世に残そうとする偉大な仕事、Pヴァインさん素晴らしい。

寺山修司の誕生日に思い出す私的なこと

本日12月10日は、故寺山修司氏の誕生日である。

私は彼の熱狂的なファンでもないし、熱心な愛読者とも言えない。

が、私が人生で初めて彼の文章に、彼の存在に触れた時の事は今もって忘れる事が出来ぬ瞬間であった。

 

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あれはまだ私が小学生の頃だった。

イギリスの作家・キット・ウィリアムズが手掛けた『仮面舞踏会~マスカレード~』という絵本が出版された。

中世の細密画の様な美しい絵に、摩訶不思議な登場人物たちが次々と登場して『不思議の国のアリス』の如き謎々を仕掛けてくるこの絵本は、本自体が大きな謎解きとなっていて、見事その謎を解き明かすと、作者手作りの首飾りが本当に手に入るという《宝探し》絵本であった。

 

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無論、このお宝が隠されているのは遠く離れたイギリスのどこか、そもそも英語の関連する謎解きや言葉遊びが私に解けるわけもなく、肝心の謎解きに関してはさっぱりだった。

しかし、私はこの絵本に魅せられた。

何より、狂気を孕んでいるとしか言えない登場人物たちの顔。当時すでに、絵本や児童文学に対しても毒やブラックユーモアや理不尽さを求め始めていた私をときめかせるに十分な内容だった。

 

夢中になって毎日の様に眺め続けていたある日のこと、ふと私は、それまで気に留めていなかった帯の裏側に書かれた文章を読んでみた。

 

それは、ほんの数年の私の人生経験の中でも、いやもっと短い読書体験の中でも、鮮烈な文章であった!!

 

……とここで、ひとつ告白しなくてはならない。

今回ブログを書く為に、押し入れの奥底から絵本を発掘したのだが、なんと、記憶にある赤い帯が付いていないではないか!外してそのままどこかへ……というパターンか。

なんという落ち度……。

というわけで、今となってはそこに書かれていた正確な文章はわからない。もし、今もきちんと保存している方が居たら「そんな文章じゃないよー」とツッコミが入るかもしれない(というかもしお持ちの方が居たらぜひとも見せていただきたい!)。

記憶なんてものはあやふやで、いつの間にやらよくわからない尾ひれが大量に付くものである。しかし、あの時感じた驚きと興奮は確かなもの。そのあたりを考慮して読んでいただけると幸い。

 

さて、問題のその文章。

どこの誰だか全く知らないが、「僕も謎解きに挑戦してみた」という内容。

「もしかしたら、表紙の少年がヒントになっているのかもしれない。彼が着ている服は緑と黄色の縞模様、“緑”と“黄色”を英語にして、さらに二つの単語を一文字ずつ順番に並べてみる…そして、下の部分の模様は“星”だから…」

という具合に、彼の“推理”が書かれていたのである。

ここでもう一度言っておくが当時私はまだ年齢はひとケタで、ホームズすら読んでいなかった。

そう、その文章はおそらく私が人生で最初に目にした《考察文》なのである!

 

なぜだかドキドキする胸の高鳴りを抑えきれず、私は父親のもとに飛んで行ってその帯を見せてこう言った。

「この人、凄く考えてる!!」

…ああ、子供の語彙力の無さよ。しかし当時の私には自分の気持ちを伝える精一杯の言葉だった。

どれどれ、という感じで覗き込んだ父親は一言、

「ああ、寺山修司か」。

…その反応に対して、(ん?)と思ったものの、興奮冷めやらぬ私は、居間に現れた兄を見つけて飛んでゆき同じ様に本を差し出し、

「この人、凄く考えてる!!」

すると兄は帯を読んで…

「ああ、寺山修司か」。

 

二人の全く同じ反応から子供心に読み取った真意は、

「この人ならそれぐらい考えるよ」

という共通の印象。

 

そんなわけで、私にとって寺山修司という人物の印象は、実際に氏の著作を読む遥か以前から《凄く考える人》となった。

もちろん、最高にいい意味で。

 

父親が好きだったのだろう、私の家には幼いころから谷川俊太郎氏の本が沢山あった。マザーグースも氏が翻訳したものだった。

特に『ことばあそびうた』と『マザーグース』はお気に入りで、今でもその多くを暗唱出来るほど読み続けた。私は谷川氏から詩の書き方を自然に学んだ。

 

『マスカレード』の帯の文章は私に、“推理すること”、“考察すること”、果ては“ものを考えるということ”を教えてくれたのだと思う。

 

それは、宝石の首飾りよりも貴重なものかもしれない。

日常の些細なシャイニング(うちのトニーはこんなもん)

《ボーっと編》

 

①仕事場で使っているボールペンが

 

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彼らに見えて仕方がない。

 

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②Bloodborne捨て子の巨人を見るたび、何かが頭をよぎっていたのだが

 

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ポケモンGOでこいつをゲットした時ハッとする。

 

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《パニック編》

 

①久しぶりに本屋に立ち寄ったら、新刊コーナーに三津田信三と飴村行と J.G.バラードが並んでいた時。

 

②調子にのってハナヤマの知恵の輪〈はずる〉のレベル6〈エニグマ〉を購入してしまった時。

 

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もうなにがなんだか…



ついでにレベル5〈マーブル〉も購入している。

 

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このザマである(元に戻せない)

 

《ちょっとハッピー編》

 

ブリューゲル展で買ったマグカップにコーヒーを淹れるととてもおいしそう。

 

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写真が悪い、写真が!!



②Bloodborneでこの場所でゲーム終了すると、次に始めた時、突然そこに居ないゲールマンの寝言が聞こえてくると気付いた時。

 

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③始発駅でバスに乗ったら、初老の運転手のおじさんが手にしていたクリップボードの裏にジミ・ヘンドリクスのステッカーが貼ってあるのが見えた時。

 

amazon哲学書のレビューを読むのがかなり面白い。おすすめは岩波文庫版『論理哲学論考』(光文社版じゃないよ!)。

ウィトゲンシュタインさんに、「あなたの唯一の著作が☆5最高!と☆1捨てろ!に分かれてますよ!」と教えてあげたい。

そして、「星とはなんだ!?」と問われ、あわわわわ…となって星の絵を描き出す。

 

とりあえず以上。

 

…トニー関係ないじゃん。

でも自宅では最近出現が激しく、スマホや眼鏡を頻繫に瞬間移動させている。

(勝手に)祝!『キッド・ピストルズの冒涜』改訂文庫化

初めて《キッド・ピストルズの冒涜~パンク=マザーグースの事件簿》を読んだ時、私はキッドのお仲間のような恰好をした若者だった。
当時周囲にいたパンクスにミステリーやSFを読む人はいなくて、なぜか近代日本文学の愛読者ばかりだった。
一方、ヘビーメタル・ファンとは話の合う人が何人かいて、「ブラッドベリの《さなぎ》は傑作だよね!」「好きな探偵は…マイクロフト・ホームズかな……」「探偵じゃねえよ!」などと盛り上がっていた。
山口雅也氏が、どこかで(うろ覚え)「ロンドンのパンクスがクリスティーを読んでいたら…」みたいな事を書いていて、「日本人だけどここにいます」などと思った記憶がある。

…と、いろいろな思い出が蘇る作品だが、久しぶりに読み返してみても、キッドの哲学は爽快で、ピンクは(若い頃に読んだ時よりも)愛らしい。
あの時私は二人よりも年下だったが(二人の年齢は定かではないが多分)、今はすっかり追い越してしまった。
シド・ヴィシャスキース・ムーンの年齢を超えた時もそんな事を思ったが、それでも変わらないものがある。

キッド・ピストルズ》シリーズの面白さだよ!
きっと、30年後に読んでも面白い。

だからどうか、この文庫化で初めて手に取るという人が沢山いますように。
そうして、その人達が数十年後に読み返してまた楽しんでくれるように。


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Bloodborneのボス描いてみた・その1

ゴースの遺子

 

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(お詫びと反省)

台詞を横書きにしたので、本来Aのように描かねばならないところ、いつものクセでBの順番で描いてしまいました。

 

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読み辛くてすいません。

今後は気を付けないと。

 

反省点は、狩人の服をベタにしたらカイロ・レンみたいになってしまった事です。

これからはディテールを描き分けよう…(ヤーナムの狩装束が好き)

 

目指せ、イラストで全ボス制覇!!

…あ、やめよ、迂闊に宣言するのは…