コジロー、ロシアへ行く。
モスクワへ行ってきた。
ブログに書こうと思いつつ三ヶ月も経ってしまった。
そう、2月の真冬に決行したのである。
毎回魅惑的な内容でプレゼンしてくる、ロシア情報サイト・おそロシ庵さんの企画についに参加を決めて。
充実しまくったスケジュールで見たもの・食べたもの・体験したこと盛り沢山の旅だったのだが…ロシアへの想いが強過ぎて、初上陸の感慨も深過ぎて、さらには旅日記のような記事を書くガラでもないので、さてどうするかと考え込んだ挙句こんなに時間が経ってしまった。
というわけで、見る事が出来て嬉しかったもの、現地で手に入れたギフト(とあえて言う)などを思いつくまま並べてみる事にした。
①魅惑の建造物
「おお、カッコいい建物!!」と思って正面に回ったら、タス通信社。
いつもお世話になってます。
ロシアの二大新聞社のひとつ《イズベスチヤ》本社。
あ!イズベスチヤ買ってくるの忘れた!
MGMのライオン、コロンビアの女神、そしてモスフィルムのアレ!!
…写真小さい、小さいよ!(たぶん近くに行けば超デカいと)
泊ってないけど超高級ホテルのホテルモスクワ。
あまりの大きさに遠近感が無くなるほど。
ダークソウルシリーズの巨大建造物のよう。
中に入ると、そこら中に「こちらからは開かない」扉があり、ショートカットのエレベーターがあり、最奥には泣きたくなるほど強いボスがいるのだ。
後述する、お土産市場。テーマパーク感満載。
実は滞在中非常に暖かい日が続いて(零下3度くらい) 、この最終日は油断してマフラーもカイロも極暖衣類も着ていなかったのだけど、いきなり気温が下がり、寒くて市場内の写真が全然撮れていない。
②喫煙事情
(非喫煙者の方には不快な内容が含まれているかもしれません。嫌煙者の方は飛ばしてくださって構いません。というか飛ばしてください)
なぜゴミ箱の写真をパシャパシャ撮りまくっているのか…これは、ゴミ箱にしてゴミ箱にあらず、灰皿だからだ!!
出国前、〈ロシアは公共の建物内では禁煙〉との情報を得、6日間禁煙するくらいの覚悟を決めていた。タイのように、レストランやホテルの外には灰皿があるといいな…と希望を抱きつつ。
ところが!
ロシア、喫煙規制に関してはユルユルである!
情報通りホテルや店内は禁煙でたいてい外に灰皿が設置されているが、地元モスクワ市民の動向を観察していると、町中にあるただのゴミ箱にポンポンと吸い殻を投げ入れていく…どころか、ゴミ箱の周りが喫煙所と化していたりする。
ううう、こ、これって…(←泣きそう)
夜のモスクワ散策。スターバックスのタンブラーを買いに他の参加者の方々が店内に入っている間、私は外で一服していた(本当の灰皿で)。買い物を終えた皆さんが出てきたので煙草をもみ消そうとすると、おそロシ庵・千葉さんが 「たぶん(歩き煙草)大丈夫」。
その晩、私は十数年ぶりに歩き煙草をした。
モスクワの冷たい空気をたっぷり吸いながら。
それは紛れもなく《自由の味》だった!!
こんなおいしい煙草、いつぶりだろうか!
愛煙家のみんな、ロシアをめざせ!!
なぜって、こんな風景の中で誰に咎められる事も無く吸えるんだぜ!!
③ウラジミール・ヴィソツキーのDVD
ギター一本、独特のしわがれ声で体制批判を歌い続けた旧ソ連のミュージシャン、詩人。
魂の叫びとはこの人の声。
これをロックと言わずしてなんと言う!!
ここ日本ではほぼ手に入らない彼の作品…ディスクユニオンに行って自慢したいくらいだ!(大きく出た)
いろいろと動画も配信されているので機会があればぜひ観て欲しい。公式もあるようだが個人の編集が多いので埋め込みはやめておくが、代表曲の《オオカミ狩り》の日本語訳付きなどもある。
私の曖昧な記憶で申し訳ないが、その昔《ダウンタウンDX》でクイズをやっていて、日本ではほぼ無名の英語圏以外のアーティストの映像を流し、「なんと歌っているでしょう?」という無茶苦茶な問題が出る、最高に面白いコーナーがあった。
そこでこのヴィソツキーの映像が問題として流れた事があるのだが、放映後、局に「あのアーティストは誰ですか」という問い合わせが殺到したという。
ネットの無い時代の熱いエピソードのひとつとして記憶している。
④旧ソ連グッズ
お土産市場に溢れた夢のような旧ソ連グッズ。お土産屋さんばかりだし、完全に観光客向けだろうが、私は観光客だ!
「HET!」(ソ連国民はお酒は飲みません!)コースターで酒を飲む幸せよ。
そしてプロパガンダポスター24枚セット。“ゴールデン・コレクション”ですよ。
今回嬉しかったのは本屋さんに行けた事。
購買欲求を抑えるのが大変だったが、小説や絵本などを購入。
そしてこれ、買わずにはいられなかった、レーニンの漫画!!
〈世界の偉人シリーズ〉のひとつらしいが、絵も上手く巻末には簡単な資料も付いてオールカラー、479ルーブル。820円くらい?
レーニンといえば…
この旅で唯一観たレーニン像(後ろのヒュンダイが無ければ最高なのに)。
その昔、スターリン主導で全国にエンヤコラサと造られたレーニン像の多くが取り払われたり別の像に置き換えられた。
宿泊したホテルの正面にも超デカい銅像があって(ちなみにポケモンGOのジムだった)、「あれは誰ですか」と尋ねたところ、千葉さん曰く「以前はレーニン像だったけど、今建ってるのはフランスかどこかの建築家。このホテルには縁もゆかりも無い人」とのこと。
これは極東の小さな島国の一共産趣味の人間の独り言に過ぎないのだが
…全部レーニン像に戻しちゃえばいいのに。
⑤旅の目的・その1
さくらんぼのジャム。
なぜさくらんぼなのかと問われれば…アレクセイ・カラマーゾフの好物だからに決まっているではないか!
ドストエフスキー愛読者(と書いてミーハーと読んでもいい)としては、なんとしてでもロシアでこれを買わねばならなかった。
私の小さい頃はさくらんぼのジャムなどお目にかかった事が無く(山形県とか行けばあったのかもしれないが)、大人になって初めてフランス産の物を食べた時、そのおいしさにビックリした。日本でよくある苺やラズベリーよりもすっきりした甘さ。
モスクワで購入したこのジャムは、ロシアではメジャーなメーカーとのこと。
さらりとした緩いタイプで、さくらんぼがゴロゴロ入っている。
凄くおいしい!おいしいよ!!
あれは18,9歳の頃。
冬は隙間風が通り抜け、夏は天然サウナと化し、春秋に窓とドアを開けて風通ししているとノラ猫の通り道になるというオンボロアパートに住んでいた頃。
金色にブリーチしまくった髪を山口雅也氏のキッド・ピストルズの如く天に向かっておっ立てて、『カラマーゾフの兄弟』を読みながら「いつかロシアのさくらんぼのジャムを食べてみたいなぁ」と思っていた。
あの頃夢想した事のほとんどは成し遂げられていないが、
さくらんぼのジャムは食べたぜ!!
いつか、本当に食べられる日が来るからな!
これからも、お前の身には想像を絶する困難が数々待ち受けているが、お前はそれを乗り越え、ロシアに行く日が来るからな!!
⑥旅の目的・その2
私は日本のパンクバンド、ザ・スターリンのファンである。
バンド名の由来は「世界で最も嫌われている名だから」。
そして、日本最高のパンクバンド。
クレムリンをバックにザ・スターリンのアルバムの写真を撮る事。
今回クレムリンの中には入らなかったが、外壁で撮る事が出来た。
前回のブログに挙げた写真とは別のバージョン。
ここまで来るのに何十年かかっただろう。
ロシアはずーっと私にとって憧れの地であった。
近くて遠い国だった。
東京っ子の私は、モスクワについた時から滞在中、ずっと感じていた事がある。
こんな意見は聞いた事は無いが、
モスクワは東京に似ている。
スケールも違うし広告が溢れている訳でもない。
でも、確かに似ている。
東京の印象とは 「賑やか」「うるさい」「華やか」「人が冷たい」「最先端」…いろいろ聞くが、たぶん東京っ子はそんな印象持っていない。
東京は「暗い」。
この話を東京出身者にすると、皆頷く。
東京は「暗い」のだ。それ以下でもそれ以上でもない。卑下している訳でもない。
何度も「全て無くなってしまった」歴史かもしれないし、多くの人が集まり、弄り回され、多種多様な物が混在し詰め込まれるカオスかもしれない。
モスクワは「暗い」。
その理由はまだはっきりとはわからないが感覚的にそこが似ていると思ったのだろう。
つまり私にとって居心地がいいのだ。
多くの国に行った訳でもないが、日本ですら「東京以外には住めない」と思っている私が、初めて「住んでもいいな」と思った都市だ。
あの、でっかくて飾り気のない灰色の集合住宅に住んで、ロシアの変なSF小説みたいな漫画を描きたい。
荒波を超え、いろいろなものを失った病み上がりで、他のツアー参加者の方々に迷惑をかけないだろうか…という不安もあった。だが、皆さんいい人ばかりだった。
(おそらく)私の人生の節目にロシアへ行く機会を与えてくれた、おそロシ庵の千葉さん、カーチャさん、本当にどうもありがとう。
そして、不意に思い立って昼間に電話で問い合わせた時、丁寧に対応してくれた大陸トラベルの大森さん、どうもありがとう。
私はまたいつかロシアに行くだろう。
煙草吸いにね。
=追記=
現在はカールソン・レジドール・ホテルズに加盟し、正式名称は《ラディソン・ロイヤル・ホテル・モスクワ》。
正面からの写真を見たら、両方の名が掲げられていた。
なんだか複雑だが、やはりきっとあの中はダンジョン…